認 め ら れ ざ る 者




「え・・・?」
意味が、解らなかった。
「何故炎を出す?」
もう一度問われても。
「・・・あの・・・どういう意味ですか・・・?」
「わからぬのか。」
「・・・・はい。」
『緋炎』は『炎の剣』だ。『炎を出す』のは当たり前ではないのか?
「武器にせよ防具にせよ、大別して『属性』を持つ物と持たぬ物に分かれる。」
その声音に、感情は見えない。
だから『呆れられている』のか、『同情されている』のか、どうにも掴めない。
「『属性』・・・・。」
「この剣の『属性』は『火』。氷などの属性を持つ魔物などには有効な武器だ。」
「・・・・・・。」
「その顔では、『属性による攻撃』はした事が無い、という事か?」
「・・・え―・・・っと・・・一度だけ・・・・。」
それは、『月の城』で。
『黒い瞳』をした黒鋼に対し、頭上から炎を見舞った。
―――――しかし、黒鋼にとっては、大したダメージにならず、逆に『空龍閃』をお見舞いされてしまったが。
「・・・それは『属性攻撃』と言うにはいささか、な。」
要は『使いこなせていない』と言う事か。
「相手によって『属性攻撃』をするのか、『無属性攻撃』をするのかを判断して使い分けねばならない。」
「・・・・どうやって・・・・。」
小狼は、まっすぐに見つめてくる視線に、一瞬背筋に冷たいものが走った気がした。
身体が僅かに震える。
威圧感、と言おうか。それとも『畏怖』か。
「『属性』を消すか否か、だ。」
手を差し出す。
小狼は茫洋としたままで『緋炎』を差し出した。リアンが静かにそれを取る。
少しく、見つめて。
スラ、と抜刀した。
「・・・・!!!」


『緋炎』は炎を出さず、静かに銀の光を迸らせた。


「・・・どうして・・・・。」
呆然として。小狼は『緋炎』を、そしてリアンを見つめた。
あれほどの炎を吹き上げていた『緋炎』が、その銀の刃をはっきりと見せている。
『炎』の波動も感じられない。
『完全』に『属性』が『消されて』いる。
可能なのか、こんな事が。
「この剣は、お前を『認めていない』ようだな。」
「・・・・え?」
「所有者を『認めて』いるならば、剣は自ずとその者の意志のままに動く。」
『緋炎』を鞘に収める。カチリ、と音がして鍔が収まった。
ならば。
『緋炎』は、リアンを『認めた』と言う事なのだろうか。
おそれた、のかもな。」
聞こえるか聞こえぬかの呟きは、心の声に応える形で。
それ以上は口に上せず、リアンは『緋炎』を小狼に返した。
「この奥にいる魔物は『炎属性』だ。剣を使わぬようにするといい。」
「・・・わかりました。」
まだ。
自分には『足技』がある。
今は立ち止まってはいられない。

前に行かなくては。
一歩でも、半歩でも。
『やると決めた事』をやる為に。


無言で歩いて。少し広がった空間に出た。
「此処が最深部のはずだ。」
小狼はぐるりと見渡した。何となく、全体が『見える』。
闇に慣れたのと、気配を感じるのと。
また、そこかしこに光苔のような物がぼんやりとした光を放っている。
(モコナが居てくれたら、羽の在り処がわかるのに・・・・。)
無い物を願ったとて、どうにもならぬ。
可能な限りの事をしなければ。
「その『チカラ』は、どのあたりから感じられるのですか?」
小狼はリアンに訊ねた。羽を探すための、今考えられる可能性はリアンにしかない。
「あの辺り、かな。」
指差した方には大きな岩壁が立ちふさがっている。
しかも。
「・・・あれが『炎属性の魔物』ですか?」
「そうだ。」
壁の前には、かなり大きな魔物が数匹、微睡まどろんでいた。
おそらくは。
『それ』を倒さねば、羽には行き着けないのだろう。
小狼は緋炎を腰につるし、拳をぐっと握り締めた。


自分で決めた道を、まっすぐに。


その時。
「・・・地震?!」
地響きが伝わってくる。グラグラと大地が揺れた。
「地殻変動だ。この国の『終わり』は、近い。」
「地殻変動・・・・・。」
実際に見たことも経験したことも無かったが、それがとんでもない事である事は解る。
小狼が奥に進む間にも何回か地震が来たが、そういう意味だったとは。
「・・・早くしないと・・・・。」
此処は坑道。穿たれた物である以上、崩壊の危険性を考える必要がある。
すう、と一息、深く吸い込んで。
小狼は魔物の群れに突っ込んだ。




―――――――――――――― * ―――――――――――――


「中々無いもんだねえ〜〜〜・・・。」
入り込んだ山の中は、そこかしこに木が生えている。
しかし、殆どが枯れていた。相変わらず、水も無い。
だが。
「あっちだな。」
生えている状況、風の色と匂い。突き合わせていけば。
「・・・・・あった。」
眼前に急に広がったのは、緑の峡谷。ものの見事に、山の稜線を境に景色が一変していた。
「・・・こりゃ〜〜〜どうだろうね〜〜〜?」
思わぬ展開に、さすがのファイも言葉が出ない。
「こっち!川があるよ!!」
モコナがぴょーんと跳ねていく。行けば清流がかなりの水量で流れ、魚の影も見える。
「・・・砂漠で苦労したオレ達は、何―――――?!」
ブーイングをたれた所でどうなるものでもないが。完璧に無視して、黒鋼は刀子を川にシュッと投げた。
「?!」
それには紐が付いていて。『手裏剣』なのだと後で説明したが。
手繰り寄せられた刀子には、魚が2匹、見事に刺さっていた。
「・・・すごい!!」
「黒たん、さすが!!」
賞賛の声を背に、もう一度投げた。獲物はきっちりと仕留められている。
ファイはサクラと一緒に近くの枝などを集めてきた。
カチカチと石を叩き、火を熾す。魚を枝に差し、周りに立てた。
結局大小あわせて15、6匹も捕っただろうか。順にそれは火の周りに立てられて。
香ばしい匂いが漂ってきて、サクラもファイもモコナも、思わず唾を飲み込んだ。
「・・・まあ、大丈夫だな。」
1尾取って解してみて。匂いを嗅いだり口に含んでみたりした黒鋼がOKを出した。
こういうサバイバルに頼りになるのは、やはり『忍者』だ。
「いっただきまーす!!」
焼けた物から皆はかぶりついた。


「・・・・おいしい!!」
「お〜〜こりゃ〜〜結構いけるねぇ〜〜!」
元来生魚が苦手なファイだが、この焼いた魚はことほか気に入ったようだ。
魚はあっという間に3人と1匹の腹の中に納まった。
「・・・・・めきょっ!!」
モコナの目がまん丸に見開かれた。
「サクラの羽!この下からだ!」
「何?!」
思わず足元を見る。黒鋼は地面に耳をつけた。
「・・・・・・。」
かすかな音を拾う。
「この下・・・空洞だ。地面の音の伝わりかたじゃねぇ。」
「じゃあどこかに入り口無いかなー?」
そう言ってきょろきょろと見渡す。しかしそれらしい物は見当たらない。
にや、と黒鋼の口の端が歪んだ。
「離れてろ。・・・そうだな、その木より向こう。」
かなり離れた所にある大きな木を指す。
大きい木。
根もそれに比例して広く広がっているはず。
深くにも。
この下が『空洞』なら、この木を支えうるその場所は空洞ではない可能性が高い。
『今からやろうとしている事』の影響は少なくなるはずだ。
ファイとサクラとモコナが退避したのを見て、黒鋼は蒼氷を抜刀した。
銀に光る刀身に、『気』が纏いつく。
「破魔・竜王刃!!」
剣戟は大地に向かって放たれた。

瞬間!!

大地は裂け、地盤が大きく崩れ始めた。黒鋼は岩の上を飛び移り、離れた所に着地する。
地面にぽっかりと大きな穴が開いた。
「・・・黒た〜〜ん・・・・。」
半分呆れ顔で。
「無茶苦茶するよぅ・・・・。」
「手間が省けただろ。」
「そういう問題じゃないでしょー?」
ため息をつきながら。皆は穴の底に向かって下り始めた。




第1章ー2に戻ります 第1章ー4へ 『時の翼』目次へ




レッツサバイバル(笑)
やっぱり『忍者』は職業柄、頼りになると思います。ぜひ秘境探検隊にご推薦(爆)
焼いてから『この魚駄目』なんて言ったら、えらい事になったとは思いますが。(笑)
まあそこは平和的に解決をさせました。お腹が空いたら『切ない』もんね〜〜〜モコナ〜〜?

『緋炎』の設定は、完全に捏造です。(苦笑)
そのあたりも含め、裏話、小ネタはこちらから。

               作者・シュウ    2006.03.19UP

copyright ©2006 時の翼 all rights reserved
inserted by FC2 system