失 わ れ し も の




闇を裂く光
照らしたもう 人間ひと
迷いを払いて 我が行くべき道を示さん
されど 光が『真実まこと』であるや否や
それの答は いずれにも在らず
ただ一人、神のみぞ知る
我願う
見そなわせたもう ただ1つの真実を



「あの店に行ったのは・・・『選んでくれた』のか?」
店を出て歩き出した、その背に問いかける。
何となく、そんな気がして。
『あの店』は、表通りから外れた所にあった。普通に歩いていたのでは、まず入るまい。

自分が、日本国の者だから―――――?

いらえは、無い。
だが、その纏う『気』が何処か柔らかくなった気がした。
もっとも。
これから向かう『宿』は、自分にとって、果てしないほど『気が重い』場所であるのだけれど。


この国の『月』は、赤い。


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「ご馳走様でした。」
「モコナ、満腹〜〜!」
「良かったねえ、モコナ。」
ファイがモコナに笑いかけた。このレストランは、中々良い。味がとても穏やかで、落ち着ける。
全てにスローペースの『こちら』組は。
『服を着替え』て、『夕食をとった』だけである。
結局図書館には行けなかった。
「まあ、明日朝1番に行ってみようよ。」
ファイの『慰め』は、自分に言い聞かせるようでもあって。
「さっき地図を見てたんだけど、『博物館』とか、『遺跡』とか、結構歴史的文物があるんだねえ〜。」
笑う目は、小狼に(好きでしょ?)と言っている。
小狼は見抜かれているのを認識して赤くなった。
実際、嬉しくて仕方が無い。
『羽』探しよりも、そっちのほうに夢中になってしまいそうで。
「『あちら側』に羽があるとして・・・・問題はその入手方法なんだろうけどねぇ・・・。」
何となく、だが、『もう』見つけているような気がする。
だが『連絡が無い』というのは、『手に入れてはいない』という事。
リアンほどの術者をもってしても、『すぐに』手に入れられないのは。
それとも。
(『魔法』を使う事が出来ない状況・・・?)
可能性は、ある。
ゲートを『騙す』形で『向こう』に行った。ばれれば、『犯罪者』になるだろう。
ここは。
かつて『内戦』のあった『国』。
『向こう側』には、『魔力を持つ者』に対して、敵意を抱く者が居ないとは言えない。
むしろ、居て当たり前だろう。
『向こう側』は、魔力を有する者にとって。
―――――――『危険な』国。


「さ、とにかくもう宿を取ろうよ。」
苦笑しつつ。予定よりはるかに遅れる『こちら組』は、のんびりとホテル探しを始めた。
まず手近な所で満室だと断られ、ようやく3軒目で。
「え?」
小狼とファイは顔を見合わせた。
「・・・じゃあ、エキストラベッド、入れてもらえますー?」
「ソファベッドでしたらご用意できますが?」
「あ、それでいいですー。」
一件落着、とファイはカウンターから離れる。サクラは小狼の袖を引っ張った。
「小狼君・・・どうかしたの?」
「・・・・実は・・・・。」
「1部屋しか取れなかったんだよ〜〜〜それもねえ。」
廊下を歩いて、示された部屋のドアを開け、明かりをつけて。
「・・・ツインルーム、なんです・・・・。」
2つ並んだ、ベッド。小狼は顔を伏せている。
心なしか、その頬が、赤い。
ファイはさっさと部屋に入って、ソファベッドをしつらえた。
「それでねえ、サクラちゃん。」
「はい?」
「申し訳ないけど、このソファベッドで寝てくれる?」
そんな事なら、と。
「はい、わかりました。」
「すみません、姫・・・・。」
小狼はサクラに謝った。サクラはにっこりして首を横に振る。
ソファベッドといっても結構ふかふかで、サクラは気に入ったらしく、ぽふぽふ叩いてみたりしている。
それにツインのベッドに隣り合わせに寝るわけにもいかなくて。
ファイも、少しため息混じりに呟いた。
「しかし、ツインルームしか無いとはねー・・・。」
「団体さんが泊まっているってフロントの人が言ってましたね。」
ファイの呟きに小狼が答える。どんな部屋でも泊まれるだけマシだ。
もしシングルルームだったなら、サクラを寝かせて自分は床の上でいいのだし。
「遅くなっちゃったし、もう寝ようっかー・・・?」
ファイの声を合図に、それぞれがそれなりに仕度をし、毛布に包まった。
「いいー?明かり、消すよー?」
「はい・・・おやすみなさい。」
「・・・おやすみなさい。」
「おやすみー・・・。」
疲れていたのだろうか?睡魔はあっという間に降りてきて。
小狼は深い眠りに落ちていった。
ファイも。
そしてサクラとモコナも。

窓の外には、赤い月。



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(あれ・・・・・?)
妙な夢、だと思った。
見た感じ、そこはホテルの1室らしい。雰囲気は、今自分たちが泊まっているホテルと似ているようだ。
そして。
(・・・・・ここって?!)
誰も居ないが、そこには大きなベッドがある。
(これって・・・・スイートルーム、って言うんじゃ・・・・・?)
ぼんやりと思ったりもして。ふと、そのベッドの脇、壁にもたれている影に気づく。それは、毛布にくるまっていて。
(・・・黒鋼さん?!)
座ったままのその姿は、どうやら眠っているようだ。視点を移すと、小ぶりなソファが在り、そこには――――。
(リアンさん!!)
こちらも毛布にくるまって、やはり眠っている。
(これって・・・もしかして、『あちら側』の光景・・・・?)
では、何故『夢』に見るのか。
(『こちら側』は魔力に満ちているから・・・?)
自分にはよくわからないのだけれど。でも、もしそうなら、2人は『とんでもない部屋』に通されていることになる。
きっとひと悶着あったに違いない、と何となく可笑しくなったその時。

静かに光が走った。
ドアが開いた――――それと同時に、『誰か』が、するりと部屋に入ってくる。
二人は、全く気づいていないかのよう。
(どうしたんですか!黒鋼さん!)
夢の中で叫んでも―――その声が届くはずもなく。
『忍者』である黒鋼が『気付かない』―――――それは。
(気配を『完全に』消している?!)
その『誰か』は、静かにソファに近づいていく。
(リアンさん!気付いて!起きて!!)
その声は、声にならず。
小狼の目の前で、その『誰か』は、煌く『剣』を振りかざした。


「逃げて―――――――っ!!」


声にならない、『声』で。しかし、それは。
『映し出された』その人に届くべくも無く。
無情にも毛布に突き立てられた、その剣の下で、『その人』は弾ける様に、そして動きを止めた。
(あ・・・・・・。)
毛布が、はらりと落ちて。
突き立てられた剣に引っかかってそこに留まり。
色を失った蒼白な顔が月に照らされて。
口元から、1本の黒いものが、その頬を伝う。
それが『血』だと、認識された時。
「!!」
さすがに気付いたと見えて、黒鋼が毛布を弾き飛ばして駆け寄ってきた。
「・・・・がっ・・・・!」
その、背に。
『あの』剣が。
記憶の本で見た光景――――黒鋼の母を貫いた、異世界から侵入した、『あの剣』が。
深々とそれは刺さり、完全に貫通し―――さしもの黒鋼も、宙に浮く形となった。
『忍者』であるはずの黒鋼が、完全に後ろを取られて。
その顔に、驚愕の色を浮かべて。
まるでスローモーションを見ているかのように小狼は認識していた。
剣が引き抜かれ、黒鋼の身体が宙に舞った。
剣は、あの記憶の本で見たのと同様に、静かに異次元へと消えていく。
黒い影が、床にずり落ちていく。
がっくりと、その身体はソファにもたれかかるように崩れ落ち、その腕は力を失って床に流れる。
見る見る広がっていく血溜まりが、その惨劇に微かな色を添えた。
あの何時も自分を見下ろしていた、力に満ちた、瞳の色で。


「黒鋼さん―――――――っ!リアンさん―――――――っ!!!」


叫びは虚しく宙を舞う。何者をもってしても、届かぬ『空』に。




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あ。
悪い癖が出た。
すぐに『消えて』貰うっていう。
でも、これは『最初から』予定していた事なので・・・・。

裏話、小ネタはこちらから。

               作者・シュウ    2006.04.20UP

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