忌 ま わ し き 再 会




いにしえの時
争いて 人は
永遠に分かつ
住まいする所を
その思いと共に




カリカリ、とペンを走らせる音がする。
パラリ、とページがめくられる。
静かに閉じて、積み上げた1番上に置いて。
違う『塔』から1冊とって、開く。
そして、また、同じ『音』。


『カリカリ』
『パラリ』
『パタン』
『パサッ』
・・・・・・・・・・・・。




―――――――――――――― * ―――――――――――――



浅い眠りに終始して。
それでも夜明け前には皆起きた。
眠るのが怖い。
―――――――また『あの夢』を見てしまいそうで。
「お早うございます。昨夜はよくお眠りになれましたか?」
昨日の警察官が早朝からやってきて訊ねた。
寂しい苦笑いをもって『いらえ』とする。
警察官の方も、それ以上は言葉を重ねない。
ご足労ですが、と前置きをされて、警察への出頭を求められた。
自分たちには拒む理由がない。
揃って訪れた警察署では、二人の人物が出迎えた。
「警察の、署長を務めております。」
『こちら』と『あちら』の署長だった。
昨日小狼が一席ぶった、『お姫様と国賓』の話が伝わったのだろう。その物腰は実に丁寧だ。
言葉を選んで、丁重に弔意を述べ、犯人逮捕への意欲を表明する。
もちろん、こちらは丁寧に、かつ打ちひしがれてそれを受ける。
顔もようよう上げられないサクラに、二人の署長は同情の念を濃くし。
「姫君には、できるだけのお力添えを。何なりとお申し付けください。」
「・・・では・・・・。」
小狼は少し考えて。
「お願いがあります。」



「小狼君、お見事ー・・・・。」
ファイの、それは賛辞。
『言質』を取った形で、小狼が望んだのは。


『図書館』に篭る事への許可。
簡単な軽食の提供。
毎日の捜査状況の報告。


「今はとても『遊ぶ』状態ではありません。」
その視線は、サクラを見遣って。
「元々『お勉強』の名目でのお忍びの旅ですから、図書館で『お勉強』を・・・。」
哀しげに、首を振って見せて。
「『お勉強』には結構没頭されるタイプですから・・・・少しは気が紛れるのでは、と・・・・。」
「・・・そうですか・・・・。」
「それにやはり、少しでも召し上がっていただかなくてはなりませんし・・・。」
小狼の、声は『真摯』そのもの。
「何か口に入りやすい物を、休憩室かどこかで口にしていただけたら・・・・。」
「わかりました。皆様の分も合わせて、消化がよくて食べやすい物を調ととのえましょう。」
「ありがとうございます・・・本当に助かります。」
「もちろん捜査の報告は必ずいたしますよ、エエ。」
ファイも舌を巻く『芝居っぷり』で、要求を通してしまった。
これで『他の事』を考えずに『調べる』事が出来る。


『内戦』の原因を。
『魔力をいとう』理由わけを。

そして。
『羽』を手に入れる方法を。




―――――――――――――― * ―――――――――――――



ひたすら『歴史書』を読み漁る。
気になった事はどんどんメモに書き写して。
もちろん本の題名と何ページかも書いておく。
あっという間にメモは溜まっていく。


此処の『文字』は、読めなかった。
小狼が1割読めるかどうか、だった。
しかしそこは『魔力』に満ちた側。『魔力』による翻訳機、なんていうのがちゃんとある。
おかげでどの蔵書も読むことができるようになった。
書架から次々と引っ張り出して。
積み上げた本を片っ端から読み進めていく。


(必ず『真実』が隠されている。)
小狼は唇を噛みしめた。
絶対に、見つける。
カケラを選り集めて、真実を紐解いてみせる。
『真実』は―――――――そう、何時も『1つ』。


図書館の小部屋が3人に供されている。
温かい飲み物と、簡単な食事――――――サンドウィッチなどがあり。
ポトフなどのように消化に良い物が添えてある。
職権を超えているようではあるが、その意味においても、『警察』に感謝すべきだろう。
気遣いをしてもらっている。
それでも、絶対的な摂取量が少ない。
『事件』からまる3日経っただけでも、3人の衰弱ぶりは見て取れた。
サクラは顔色が悪い。
モコナは、『また』食べられなくなったのに、空腹を訴えない。
小狼は目がギラギラしてきた様だ。
ファイにいたっては、元々白いのに、さらに青白く、幽鬼のようですらある。
それでも。
何かに取り憑かれた様に、3人は作業をやめなかった。
警察側も、その心中を慮ってか、忠告するにとどめている。
捜査の方も膠着状態であるらしく、毎日上げられる報告も単調な物だ。


調べて。
調べて。
調べぬいて。
「これって・・・・『わざと』だよね?」
ファイと小狼は顔を見合わせた。


『魔力をいと理由わけ』が、 『内戦の理由』がどこにも無い。


よほどの禁忌タブーなのか。
どの歴史書にも、その記載は『無い』。
「ジェイド国のように、『沈黙が美徳』とか、『忌み言葉』とかでもないようですね?」
あの雪に閉ざされた国は、ある意味『奇妙な』国であったのだが。
「これじゃあ八方塞だ・・・・。」
握り締めた手が、痛みを覚えない。感覚すら麻痺し始めているのだろうか。


その時。


「―――――――!!」
サクラの、声にならない叫びに、はっとした。
見れば、書架の前で、サクラが口を押さえて、目を見開いている。
手には、1冊の、本。
「どうしたの?!」
一応館内である事を憚って、そっと駆け寄り、小声で訊ねる。
サクラは顔に驚愕を貼り付けたまま、ぎこちなく向きを変えて。
手にした本を二人に見せた。
「・・・・これは!!」
その本に書かれて――――――いや、『描かれて』いたのは、サクラの『羽』。


『その本』は、『絵本』、だった。




―――――――――――――― * ―――――――――――――



考えてみれば。
「・・・ジェイド国も、『伝説』だったよねー・・・。」
それは、悔しそうに。
「『伝説』・・・『おとぎ話』・・・もっと早くに気が付くべきでした。」



『おとぎ話』は正規の『歴史書』には載らない。



声に出して読むために、小部屋に戻った。
「私が読みます。」
サクラが、決然と。
「私の『羽』ですから。」
小狼もファイも頷いた。サクラは大きく深呼吸をして、その絵本を読み始めた。



『・・・昔々、ある所に、双子の王子様がいました。
一人の王子様はとても力が強くて、剣が巧みでした。
もう一人の王子様はとても頭がよくて、色々な魔法が使えました。

ある時、お父様の王様が亡くなりました。
大臣たちは、王子様のどちらが新しい王様になるかでケンカを始めてしまいました。
そのうちそれは国中に広がり、とうとう国は2つに分かれて戦争を始めてしまいました。

双子の王子様たちは、とても嘆き悲しみました。
「ああ、僕たちが双子だったから。」
「どちらか一人であったなら、こんな事にはならなかったのに。」
嘆きの果てに、剣の巧みな王子様は心に決めました。
「そうだ、僕が居なくなればいい。
あの子は頭がとてもいいから、きっといい王様になる。」
そう決めて、王子様は煌く剣を自分の胸に突き立てました。

魔法の上手な王子様も考えました。
「そうだ、僕が居なくなればいい。
あの子はとても強いから、きっと皆を守ってくれる。」
そう言って、王子様は自分の心臓を魔法で止めました。

国のみんなは驚き、そして悲しみました。
「ごめんなさい、王子様たち。」
「私たちが争ったから、こんな事に。」
「どうかもう一度、帰ってきて下さい。」
「この国を、お二人で治めてください。」
人々が一心にお祈りしていると、天から眩いばかりの光が降りてきました。
「『羽』だ。」
「『羽』だよ。」
口々に指差して、ざわめく皆に、『羽』は静かに語りかけました。

「死んでしまった『命』はもう還らない。」
国中に悲しみと嘆きの嵐が起こりました。
「でも、その『心』を受け継ぐ事は出来る。」
『羽』は光り輝いて。
その光の中に、二人の王子様の『幻』が浮かび上がりました。
「王子様。」
「王子様。」
人々は口々に呼びかけました。
『王子様の幻』は、向かい合わせになって立ち、大きく両手を広げました。

「『向かい合わせ』、『右』と『左』を対にして。」
「『向かい合わせ』、『表』と『裏』を対にして。」
「『向かい合わせ』、『1つの事』を『2つ』に分けて。」

鏡に映った2つの街。
表と裏を剥がすように。
1つだった街は2つになって。
「皆で決めよう、2度とケンカが起こらないように。」
「2度と戦争が起こらないように。」
「魔力のある人とない人で、住む所を分けましょう。」
「でも『対の街』だから、同じこと。」
「住んでるお家も同じ。」
「読む本も同じ。」
「食べる物も同じ。」
「皆で仲良く暮らしましょう。」
「『あちら』と『こちら』で、幸せに。」

『羽』のおかげで皆は幸せの道を見つけました。
「ありがとう、『羽』さん。」
「ありがとう。」
「ありがとう。」

「どうかこのまま居てくださいな。」
「ああ、でも『羽』は1つだけ。」
「どうしよう。」
「どうしよう。」

「そうだ、『羽』は『両方』で守りましょう。」
「どうやって?」
「どうやって?」


「『チカラ』に満ちた『羽』を守るのは、『魔力の無い』者の街。」
「『チカラ』があるから、封印を。そのカギは『魔力のある』街に。」
「『封印』の解除の仕方は『魔力の無い』街に。」
「間違えないで、『順番』を。」
「間違えないで、『右』と『左』を。」
「間違えないで、『やり方』を。」
「間違えたら『国』が壊れるから。」
「間違えないで。」
「間違えないで。」

教会の屋根の下。
『時』を告げる『羽』の『チカラ』に護られて。
2つの街は、未来永劫、平和に暮らしましたとさ。』



「・・・・・この意味だったんだ・・・・。」
ファイは思わず口に手をやった。
(知っていたんだ、あの女性ひとは。)
だから。
「小狼君、『地図』、出して。」
「・・・?はい。」
受け取った地図を、『半分に折る』。
「『こちら』では『向こう』の地図は手に入らない・・・・・。」
その双眸は、妖しいまでの光を帯びて。
「だから、『受付』で、『両方』の地図を手に入れたんだ・・・・。」
あの女性ひとは。
わかっていたのだと。


地図は2枚に分かれた。――――魔法をかけたかのように。
「『あちら』と『こちら』の地図だよ。・・・よく見てごらん。」
「・・・・同じ・・・・?」
「・・・よく、見て。」
ファイに促されて、小狼とサクラは地図をじっと凝視した。
『教会』を中心として、円形に、『左右対称』に、広がる『2つの街』。
「・・・ファイさん・・・?」
小狼は、微かな違和感を感じた。黙って地図を指差して、ファイに説明を求める。
ファイはにっこり笑って、地図の1枚を窓に貼り付けた。
「見てて、ね。」
もう1枚を重ねる。窓外の光に透かしたそれは、道などが微妙にずれていた。
「・・・・・。」
くるり、と裏返して。
もう1度重ねた。
「・・・・・・ファイさん!!」
小狼とサクラは、同時に声を上げた。
「こういう意味なんだよ・・・。」
絵本に語られた、歌うような『言葉』の意味は。
「『表』と『裏』・・・・『表裏一体』なんだよ。この2つの街―――――この『国』は。」
2枚の地図は、寸分たがわず、同一のものだった。


「―――――ところで、この『国』の『古名』を知ってる?」
それは、ファイが紐解いた歴史書の中にあったのだろう。
その名を小狼が『見なかった』のは―――――――幸いだったのかもしれない。
何故なら。
ファイの『声』は、『悪魔の囁き』にも似ていたようだったので。


「この『国』の『古名』はね。」
ファイの目が、凄みを増した。
「『リフレクタルランド』―――――――『鏡像の国』、っていうんだよ。」


小狼は、意識が一瞬にして浮遊するのを感じた。
自分そっくりの、あの少年の、口元に浮かんだ笑みが、見えるような気さえして。
『鏡』。
『鏡の虚像』。
この『国』は。
ある意味で。


『自分』と―――――――『同じ』。




―――――――――――――― * ―――――――――――――



「とりあえず、『羽』の所に行ってみよう。」
『絵本』の通りなら、『羽』は『向こう側』だけど。
「『仕掛け』は『こちら』にあるはずだよね。」


『羽』は。
『教会の屋根の下』。
『時』を『告げる』―――――――それは、『教会の鐘』。
「教会の・・・『鐘楼』に在るって事ですね?」
「たぶん。」
地図を片手に教会を目指す。なんだか足元がふらつくが、己を叱咤して首を振る。
(今倒れるわけにはいかない。)
その一念で。
一同は教会にやってきた。


『こちら』の教会には、『鐘』がある。
「中に入ってみましょう。」
小狼の言葉に、皆は中に入った。
幸いにして、他に人はいない。
大きくループを描く階段があり、柱の装飾も結構凝っている。
どちらかといえば、『教会にしては不似合い』なぐらいだ。
(『仕掛け』は何処に?)
しかし、解らない。
『解除の仕方』は『向こう側』にある。
『仕掛け』がどんな物なのか、それがわからないことには、次の手が打てない。
辺りを見渡す。

不自然な物はないか?
この場所にあったらおかしい物はないか?

コト、と。
サクラが何かを『置いた』。
「・・・姫?」
呼びかけられて。
サクラははっと振り向いた。
「あ・・・・うん・・・別に・・・・。」
「どうかしたんですか?」
「うん・・・この『小箱』・・・・。」
そう言って、今しがた自分が置いた『小箱』を見遣る。
「何だか『此処にあるのが不釣合い』な気がして持ったんだけど・・・・やっぱり『持っちゃいけない』って思って・・・。」
「・・・・・!!」
ファイが駆け寄ってきた。
じっと『小箱』を見つめて。
そろそろと手を伸ばし。
持ち上げようとして―――――びくん、として、手を離した。
「・・・ファイさん?」
「・・・・見つけた・・・・・。」
「え?!」
「『これ』だよ・・・『羽の封印』は・・・・・。」
その見つめる先には――――――『小箱』。
「・・・これが?」
「そう。」
その視線に、凄みを増して。
「『持っちゃいけない』と思わせる・・・つまり、『此処から動かしちゃいけない』って事だよ。」
「・・・どうやって?」
「『魔法』の『力』を甘く見ないで下さ――――い。」
軽く、言ったが、しかし。
「『仕掛け』が間違って『捨てられちゃったりした』ら、大変だからねえ。」
それは、確かに。
「だから、人の『意識下に働きかける』魔法が掛けてあるんだ・・・『捨てられない』ように。」


「お見事ですねえ。」


パチパチと、気の無さそうな拍手が続く。
『声』も『拍手』も、その本来の持つ『賞賛』の意を全く感じさせない。
120%以上の確率を持って、『嫌味』のレベルだ。
「あなた方の『洞察力』はわかっていましたが、いや、中々。」
だから、全然『賞賛』していない。
「だからこそ、ここで『消えて』いただかなくては、ねえ。」


「――――――――『貴方』だったんですかぁー。」
恐ろしく間延びした声。
普段より抑揚が無い。
それがファイの『内なる怒り』を感じさせる。
「いやー大したもんですねぇ――確かにオレでも『そうした』と思いますよぉー。」
思いっきり棒読みだ。
「まさに『千載一遇の機会』ですもんねぇ―・・・。めったに無いですよねーこんなチャンス。」
視線が、纏う『気』が、絶対零度の冷気を呼ぶ。
「『時の魔女』という二つ名を持つ『最強の魔術師ウィザード』と、『日本国最強の忍者』・・・。」
確かに、あの『二人』は。
「考えてみれば、『とんでもないペア』ですもんねぇ―。」
その目は、遙かなる虚空を見る。
「『最強コンビ』を『一気に消せる』、絶好のチャンス、でしたもんねぇ・・・・?」
暗がりに現れた『影』を、睨みすえて。――――――それだけで心臓が止まりそうな、『視線』で。


「そうでしょう?・・・・・・・・『カイル先生』?」
『眼鏡』の奥の目が、残忍な色に細められた。




―――――――――――――― * ―――――――――――――



それは、ジェイド国で。
それは、ピッフルワールドで。
『サクラの羽』を狙ってきた『男』。
そんな優男やさおとこ然とした、柔和な顔の、その奥で。
どす黒いまでの『野望』を秘めていた、あの『男』。
目的の遂行のために、手段を選ばなかった、あの『男』。
「カイル先生・・・いやさ、『カイル=ロンダート』。」
ファイが人の『名』をフルネームで呼ぶのは、『相手に対して宣戦布告をする時』。
だが、今まででも、これほどの殺気を含んだ事はなかった。
彼の、怒りが。
傍に立つ自分たちの頬をも打つ。
カイルの方は余裕で、手に『光』を紡いでいる。
「!!」
それは数本の煌く刃となった。
カイルの周りにフワフワと漂って。
突如として襲い掛かってきた――――――『サクラ』に向かって。


「―――――――!!」


瞬間、ファイはサクラを抱えて飛び退すさり、小狼は手刀と蹴りで叩き落した。
(―――――――――本気だ!!)
考えて見れば、カイルは何時もサクラを『殺す』気でいた。
ジェイド国では、サクラに自らの剣を向けた。
レースでは、『当たったら大怪我ではすまない』レベルの間欠泉をお見舞いした。
そうだ、いつも。
その『殺意』は『サクラ』に向けられていた。
――――――そして、今も。
歪んだ笑みを口元に浮かばせて。
第2撃が襲い掛かってきた。これまた何とかしのいで――――――。
(?!)
ファイは、不可思議な感覚にとらわれた。
魔法が―――――――?
「ああ、そうそう。」
明らかに嘲笑を込めた風でカイルは言う。
「その『小箱』の周辺ではね、『魔法』は使えませんよ。防除魔法が働くようでしてね。」


それは。
『小箱』を『護る』ために。


しかし、今は。
自分たちにとっては、『果てしない』危機。
(ってことは、『防御障壁バリヤー』張れないって事じゃない!!)
ファイはぐっと唇を噛みしめた。
カイルの周りに現れた、禍々しい『煌き』の数の多さに。


『次の攻撃』をしのげるか?


壁際に追い詰められる形になっている。
小狼の蹴りと手刀にも限界がある。
(絶対サクラちゃんには、指一本触れさせないから!)
たとえ、自分がその刃を受けたとしても。
二人で、睨みすえて。
カイルは勝利を確信して。
『第3撃』は、放たれた。



「 天魔・空龍閃!! 」



(『夢』で会えたら・・・嬉しいな・・・・。)
小狼はぼんやりと考えた。
ああ―――――――――それは。
(確か、『月の城』で。)
『黒い瞳』をしていた『彼』が、小狼に向けて放った剣技。
(初めて見た。)
そう――――――『方向を変える』剣戟を。
だから『避けた』つもりでも、自分を追って剣戟は襲い掛かってきた。
あんな事が出来るなんて、と思った。
そう、今も。



凄まじい『気』の奔流は、『四方八方』から襲い掛かった凶刃の全てを叩き落し、粉砕した。



「―――――――何?!」



誰よりも驚いたのはカイルだった。
『絶対に避けようの無い』攻撃を。
全て『打ち砕かれる』などとは。
それも。



『自在に空を走る剣戟』によって。



「くっ・・・・!」
思わず口を歪めて。
カイルは銃を取り出した。―――――狙いは、サクラの上、に。
「!!」
鈍くも高い金属音がして。
銃には『刀子』が刺さっていた。
そのままの衝撃で、カイルの手から銃が離れる。


そして――――――――――。


確かに見た。
その時走った黒い疾風かぜを。
そして、耳朶を打つ、その響きは。



「・・・・・・よォ・・・。」



小狼は。
サクラは。
ファイは。
モコナは。
時が止まったのを、確かに感じた。

――――そして、カイルは。
自らの首元に、銀色の光が舞い降りるのを、頭の何処かで認識した。
そして見た。
妖しいほどに煌く、真紅の瞳を。
そして、聞いた。
その口元に浮かんだ、残忍とも取れる笑みと共に、紡がれた『言の葉』を。



「よくも俺たちを『殺して』くれたな・・・・礼を言うぜ。」




第3章ー4に戻ります 第3章ー6へ 『時の翼』目次へ




すみません。
この後書きを書く前で、既にこの『第3章ー5』が、『第3章ー4』を上回る量であることが判明しました。^^;
これでも削ったんですよ〜〜カイル先生の出番を。(笑)
いや、この方は私の『嫌いな』キャラのベスト3に入る方なので。(なら出すな)
ちなみに残りの二人っていうのは、高麗国の領主親子でございます。

ビミョーに某推理オタク少年の名台詞が入っている気がしますが。(笑)
とりあえず、スルーしてください。(爆)

裏話、小ネタはこちらから。

               作者・シュウ    2006.04.23UP

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