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年代記に曰く――――――――。
日の本の国に、美しき女帝あり。
御名を、『天照』とぞいふ。
美しき御妹君あり。
『月読』とぞいふ。
一人の丈夫ありて、お二方をこそ護りたり。
そは、黒き疾風なり。
彼方の地より、二つの明星来たれり。
一人を、『暁の君』とぞ呼ぶ。
輝ける金糸の髪に光を弾き、柔らかに微笑みつも、大いなる力を秘めし丈夫なり。
天照の帝の側に侍し、大いなる援けとなりたり。
いま一人は、『長庚の君』とぞ呼ばれたり。
深き紺の髪と、昏きその瞳に、深遠の闇を映し出す、天上の佳人なり。
光無き者なれど、その力は『暁の君』、『月読の姫』をも遙かに凌ぐものなり。
されど、常に己を律し、差し出た振る舞いの一切が無きその有り様は、皆の心に深く染み入るものとなれり。
時が降り。
黒き疾風は、長庚の君を伴いて、己が生国に立ち帰りたり。
その地の名を『諏倭』とぞいふ。
『諏倭』の地を護る、丈夫と姫巫女を得て、数多の民草も心安く生活の道にいそしみたり。
『日本国』は、大いなる護り手の手によって、末永く栄えしと伝えたり。
『時』は弛む事無く綾なして。
人の命も心も、何もかもを乗せて、時の大河は滔々と、永遠に流れ続けるものなり。
今。
綺羅星の如き、二つなる『貴種流離譚』ありて。
そは一つになりて、『時』が棹差す船に乗りて流れ下りゆく――――――――。
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バサ!!と、稲藁が落ちた。
切り口にはいささかの躊躇いも見られない。
「ふん、だいぶ腕を上げたみたいだな。」
「約束だよ!技を教えて!!」
「・・・・いいだろう。何がいい?」
「『破魔・竜王刃』!!」
「・・・・・まーた、難易度の高い技を・・・・・。」
「『破魔・龍王陣』の方が難しいよ!!」
「・・・・・・・。」
「・・・・どうしたの?」
「・・・・いや、俺も親父に最初に習ったのは、『破魔・竜王刃』だったな、と思ってな。」
「・・・そうだったの。」
「そうだ、あの時親父が聞いた事をお前にも聞こう。・・・・お前は何の為に強くなる?」
「え?」
「己の為だけか?」
「違う。」
その即答は、その心の真っ直ぐさを表して。
「この諏倭を護る父上や母上、理子や皆を護りたい。だから強くなりたい。」
それは、かつて父に答えた、己の答と同じ。
「・・・・上出来だ・・・・・・。」
己と同じ固い黒髪の頭に手を置いて。
わしゃわしゃと撫でる。
やめてよー、と照れたような抗議の声を聞きながら。
紅玉の瞳はスッと優しげに細められた。
「その言葉、絶対に忘れるな。これから何があろうとも、だ。」
「・・・・・・・はい。」
諏倭の地を渡る風が静かに吹きぬける中。
『黝簾石の瞳の少年』は、にっこりと微笑んだ。
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全ては年代記の中の、ほんの1ページの、伝承――――――――。
《 完 》
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