機 織 姫たなばたつめ の 鏡



「さ〜さ〜の〜は〜さ〜らさら〜〜♪」
ご機嫌な鼻歌が聞こえてくる。
宿の庭、何処からか貰ってきた『笹』に、色とりどりの短冊や飾りをつけていく。
「別に『七夕飾り』を作るなとは言わねぇが。」
眉間の皺をさらに増やして、黒鋼が吠えた。
「その変な鼻歌、やめやがれ!!」
「え〜〜?せっかくモコナに教えてもらったのに〜〜?」
「白まんじゅうも、ヘライのに変な調子で教えるんじゃねぇ!!」
「黒鋼、妬きもち〜〜!」
「はぁ?!何でだよ!」
「黒鋼きっと音痴なのー!」
「・・・・!てめぇっ!このっ待ちやがれ!!!」
七夕飾りそっちのけでどたばたが始まった。
「毎度の事だねぇ・・・・。」
いい加減呆れて。
鋏で器用に折り紙に切込みを入れていく。
「それにしても、何時も飽きないですよね?」
さすがのサクラも苦笑しながら。短冊に紙縒りを貼り付けている。
「だからいいんじゃないですか?」
これまた苦笑しながら、小狼が笹に結び付けていく。
「―――――――そこ!!和んでんじゃねぇ!!」
どたばたのついでに噛み付くように怒鳴って。
3人は顔を見合わせた。
「だ、そうだ。」
「・・・八つ当たり・・・・?」
「・・・ですね。」
少しのため息と、苦笑いと。
心和む、今日の月は、まん丸満月。




―――――――――――――― * ―――――――――――――



「あれー?リアン、何してるのー?」
大騒ぎの後、皆が寝静まった、宿の庭。
何かの気配を感じて降りてきたモコナは、庭で椅子に座って月を眺めているリアンに声をかけた。
「――――――今日は、いい月夜だ。」
「・・・そうだね〜。」
「鵲も、これなら橋になってくれるだろう。」
「・・・ん・・・・・。」
「年に1度の逢瀬、か。」
月を見上げる、その横顔に、表情が読めない。
モコナも月を見上げた。
「でも・・1年に1回でも会えたら・・・いいよね・・・・・。」
「・・・・・・・。」
俯いたモコナをじっと見て。
リアンはふっと羽根を飛ばした。
羽根は光り輝き、不可思議な空間を見せる『鏡』に転じる。
「・・・・リアン・・・・?」
「『会いたい者』に『会う』といい。ただし、1人だけ。時間も限定されるが。」
そう言って、背を向ける。そのまま宿に戻っていった。
1人残されて。
モコナはぽつん、と佇んでいた。
「『会いたい者』・・・・・。」
そっと。
モコナは鏡に手を触れた。
ちょうど月が、鏡の背後にさしかかった――――――。
「!!眩しい!!」
鏡がえもいわれぬ光を放って光り輝き、その光が収まると、中に何かが見えてくる。
「・・・あ!!」
鏡のこちらと向こうで。
その声は同時に上げられた。
「『ラーグ』!」
「『ソエル』?!」
それは、次元の魔女の元に居る、対の片割れ。
いつもは声だけでしか会えない。お互いが通信機になるからだ。
それが、今。
はっきりと、お互いの顔を見ることができる。
思わず涙がほろり、とこぼれた。
「会いたかったよ・・・・。」
「会いたかったんだ・・・・。」
叶わぬ夢、遠い夢。
『彼ら』の旅が続く限り、終わらない『別離』。
「・・・元気だった?」
「うん。・・・そっちは?」
「とっても元気だよ。・・・少し痩せた?」
「ううん。そっちこそ、痩せたんじゃない?」
「全然!」
声を上げて笑いあう。
ふと、その顔がユラリ、と歪んだ。
「・・・あ!!」
「時間なんだ・・・・・。」
「・・・また会える?」
「もちろん。必ず待ってる。ここで。」
「うん・・・ありがとう・・・・・。」
鏡の後ろを月が通過しきった。
鏡がすう、と消えていく。
名残惜しそうに。
それを見つめていたモコナだったが、目をゴシゴシ、とこすって立ち上がった。
ぴょーん、と跳ねていく。
そのままリアンの部屋の扉を、ほとほとと叩いた。
細く扉が開けられる。
「ありがとう・・・懐かしい顔に出会えて、とっても嬉しかったよ。」
「そうか。」
「ねぇ・・今日、一緒に寝ていい?」
「・・・構わないよ。」
そのままするりと部屋に入る。こざっぱりと片付けられた室内は、『片付きすぎている』ほどだ。
「もう寝るよ。」
毛布を持ち上げてくれた、その隙間にもぐりこむ。
「一緒に寝るの、初めてだね。」
「そうだったかな。」
「今夜は晴れているから、きっと織姫様も彦星に会えたよね。」
「そうだろうな。」
「会ったら、どんなお話するのかな?」
「1年間の出来事から始まるのだろうな。」
「いっぱいいっぱい、お話しするよね。・・・また来年会うまで、少しでも寂しくないように。」
「・・・そうだな。」
他愛も無い会話を少しして。
やがて静かに眠りに落ちていく。


モコナは、笹舟を棹差しながら、ラーグの元を訪れる、そんな夢を見た。








七夕バージョン突発外伝です。(笑)
本編書き上げて気が楽になったせいか、無性に書きたくなりました。
本当は、骨董屋で見つけた『水鏡』を皆で見て、それぞれに懐かしい人を見る、というものだったんですが、
ちょっとモコナ限定にしてみました。
いや、『短く』収める練習をしようかと(自爆)
たぶん無理ですが。^^;

最後に見た夢、船に乗って通うのは彦星の方なので、ラーグの方が男性的じゃないかとは思うんですが(苦笑)
此処はまあ、ソエルに舟を漕いでもらいました。


日本全国、今夜は晴れますでしょうか??

               作者・シュウ    2006.07.07UP

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