「サクラ姫は『外』に行ったわ。」
次元の魔女の言葉に、魔術師はその目を見開いた。
何で。
何でサクラちゃんが。
何で『外』に?!
・・・・なんで『行かせた』の?!
危険だって解ってるのに!!
それも、どうやら『1人』。
「何を考えてるんだよ・・・・・黒・・・『黒鋼』は!!」
毛布を弾き飛ばして。
戸外に出た黒鋼の方へ駆け出した。
黒鋼は、『小狼』と共にいた。
駆け寄ろうとして。
――――――――その足が止まった。
風に乗って、声が伝わってくる。
「・・・お前はこれからどうするんだ?」
「『彼』を探します。」
見事までの即答に、今まで共にいた『彼』の面影を見る。
そう、『彼ら』は。
『同じ』で。
そして、『違う』存在なのだ――――――。
「・・・見つけて、どうする。」
「決着をつけます。」
「・・・元居た世界には戻らねぇのか。」
「『全て』が終わって、まだ『命』があったら、戻ります。」
「・・・・そうか。」
『彼』が支払った『対価』の重さは、自分たちとは比べ物にならないほど重いのだと。
知れば、後に言葉はない。
「・・・・貴方の事、どうお呼びすればいいですか?」
それは、これからもなお旅を共にする、と。
「・・・・『小僧』と同じでいい。」
「解りました。」
「俺も『同じ』でいいか?」
「・・・・構いません。」
そこに、『彼』の影が見え隠れする。
だがむしろ、『忘れない』為にはいいのかもしれない――――――。
「・・・・無事だといいですが。」
それは、サクラの事、と。
「『無事』ではすまないだろう。・・・だが、これを決めたのは『姫』自身だ。俺たちがどうこう口出しできる事じゃあねぇ。」
自分で決めたことを。
為すと決めたことを。
「魔術師は、これからも・・・・?」
「あぁ。『餌』が要るからな。」
『小狼』の眉がスッと顰められた。
「余計な口出しでしょうけど・・・・その物言い、『彼』の前ではしないほうがいいと。」
「俺は『餌』だ。」
天を仰ぐその横顔に、感情が見えない。
「憎まれようが怨まれようが、そんなこたぁどうだっていい。はなっから覚悟の上だ。」
「・・・・・・・。」
「俺の『目の前』で、もう『誰も死なせねぇ』。・・・ただ、それだけだ。」
『護れなかった』自分に、もう『戻りたくはない』。
『小狼』は、そっと黒鋼の背に手をやった。
「治療しろって言われたじゃないですか。」
「姫が戻るまでは、待つ。・・・姫にはきっと『薬』が必要だ。」
『治療のための品』が不足しているこの『東京』では、『薬』は貴重品。
おそらくは傷ついて戻ってくるであろうサクラの治療に『薬』が無かったなら――――――――。
そして、それが、『自分のために使った』せいだとしたら。
(・・・優しいのだな、やはり、この人は。)
『もう1人の自分』を通して見てきた、その事実に偽りはない。
「ヘライのにも、内緒だぞ。」
その傷が小狼が奪った魔力によるファイの魔法のせいであり、ファイを庇ったせいであるという事を。
「・・・わかっています。」
『小狼』は、微かな微笑みをその口元に浮かべた。
柱の影で。
顔を覆った白き魔術師は。
身体の奥底から迸り出る嗚咽をこらえる事が出来ないで居た。
「・・・皆・・・・・・バカだよ・・・・・・・。」
傷つき果てた砂漠の姫の帰還まで、あと数時間――――――――。
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