「美味し〜〜い!!」
「こっちの甘さは、そっちのとはちょっと違うね〜〜?」
「このホワホワ感が何とも言えないのー!」
ぴくぴく。
眉間の皺が4割増しぐらいか、と小狼はぼんやり考えた。
「え〜〜〜?どれが『一番』なんて、決められな〜〜い!!」
「難しいです〜〜!」
「うーん、どうしよう・・・?」
「・・・・勝手にしやがれ。」
グイ、と酒を喉に流し込む。
「俺ぁ、甘いもんは好かねぇ。」
「・・・・・・・。」
苦笑いするしかない。
小狼は『とびきり好き』でも、『とことんキライ』でもない。
微妙な関係位置だ。
「・・・とりあえず、姫達に任せて・・・・。」
「ふん。」
ここで魔物でも顔を出そうものなら、一瞬で蒼氷の錆になるだろう。
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『その国で「一番」のケーキをちょうだい。』
ある国で、次元の魔女の助勢を乞うた。
快く力は貸してくれたのだが。
その対価を指定された。
「この国での『一番』?」
『ちょうどケーキコンテストをやっているわ。』
「あ、なるほど・・・・・・。」
コンテストの優勝者の作ったケーキを贈ればいい、ということだ。
それならば簡単だ、とコンテスト会場に向かったならば。
「・・・わぁ・・・・!」
途端にキラキラ笑顔満開になった3人(正確には2人と1匹)。
苦虫噛み潰した仏頂面が1人。
少しオロオロしながら苦笑いするのが1人。
コンテストには、たくさんのケーキが出品されていた。
観客たちは、その姿を見、試食をして評価を決める。
10点満点で評価を書き、箱の中に入れていくのだ。
そして総合得点の一番高いケーキが、優勝。
システムとしては単純明快なのだが。
問題は、その数。
多い。
当然食べる回数も量もハンパではない。
試食用に別に切り分けられた分があり、『お1人様につき1切れのみ』なんて注意書きがある。
「いや、こんな注意書き無くても、1切れで十分だよ・・・・。」
さすがのファイも、少し辟易し始めていた。
「全然オッケー♪」
と豪語するモコナは解るとしても。
そのモコナにしっかり尾いていっているサクラの胃の腑は、一体どんな構造になっているのだろうか。
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チョコレートでコーティングされたガトーショコラ。
ホワイトクリームで雪の様にふんわり形作られたホールケーキ。
クリームとアラザンでやはり雪の意匠のようになったシフォンケーキ。
その上に1つのストーリーが詰まったチョコレートのショートケーキ。
零れんばかりに果物がいっぱい乗ったホワイトクリームのショートケーキ。
ホイップクリームをたっぷり添えた、シンプルなのに気品のあるチーズケーキ。
薪をイメージしたブッシュドノエルは、その上をサンタを乗せたそりを引いたトナカイが走っていく。
どれも、これも。
本当に美味しそうで。
3人はうんうん唸りながら点数を書き込んでいった。
「どれが選ばれるのかな?」
「どのケーキが選ばれてもおかしくないよね?」
「どれもこれも、皆心がこもった、素敵なケーキだったよ!」
教会の鐘が鳴り響き。
コンクールの締め切りを告げる。
すぐに開票され、集計されて。
優勝はチョコケーキのブッシュドノエルと決まった。
「さあ、オーダーしに行かなくちゃ!!」
既に殺到しかかっている人波に向かって、サクラとファイは次元の魔女への対価をゲットしに挑んでいった。
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「美味しい物はいくらでも食べられるわねぇ〜〜〜♪」
至極ご満悦の体で次元の魔女はケーキを口に運ぶ。
「んー、やっぱり最高〜〜〜!」
そのお眼鏡にかなったのであれば、『対価』としては十分だっただろう。
「侑子さん、こっちは後にしますか?」
四月一日が顔を覗かせる。
「え?ダメよ、ダメ。さっさと出してちょうだいな。」
「まだ食べるんすか?!」
「当たり前じゃない!!今日食べなくて、一体何時食べるのよ!!」
ビシィッ!!とフォークで指示を下す。
「持ってきて!!」
「お腹壊しても知りませんからねー!!」
ぶつぶつ言いながら、四月一日は盆を持ってきた。
「わくわく、わくわく♪」
「うるさいですよ、侑子さん。」
四月一日は冷たく一蹴し、そっと器に手を添えた。
緊張の、一瞬。
(上手くいってますように・・・・!)
1ヶ月以上前から準備したものだ。
今この瞬間、失敗したら、その全てが水の泡。
そうっと、そうっと。
器は持ち上げられ、とうとう『それ』が姿を現した。
(・・・よし!!)
心の中でガッツポーズをする。
形は崩れていない。
さっとブランデーをかけ、火をつける。
青白い炎がぼうっと立ち上った。
「フランべされてる『クリスマスプティング』は別格よね〜〜。」
アヤカシの炎であるかのようなブランデーの揺らめきに。
次元の魔女は妖艶な、何処となく不可思議な笑みを浮かべたのだった。
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