「 足 許 で の 攻 防 戦 」




「さっぶぅ〜〜〜〜!!」


そういうのもムリはあるまい。
今年の日本国の冬は雪こそ少ないものの、冷え込みが厳しい。
あちこちで凍結だのなんだのと、本来の刺客相手とは全く別次元の仕事が増えているのも確かだった。
「姫にはちっときついかな。・・・炬燵に入れよ。」
「オレはー?」
「てめぇはその辺に転がってろ。」
「ひのっ!!第一、此処、オレの部屋だし!!」
それは事実、ファイの部屋であって。
むしろ黒鋼たちのほうが『客』だ。
「しょうがねぇだろ。俺の部屋にゃ炬燵はねぇし。」
「この冬空に、火鉢1つで大丈夫なんてのが信じられませんー!!」
半分は正論だが。サクラと小狼はいわれるままに炬燵に入った。
「わぁ・・・・温かい!!」
ほんのりとした温もりが身体に染みとおる。
「掘り炬燵だから、足は邪魔にならないしね〜〜。」
ファイほど背が高ければ、当然足も長い。床に置くタイプでは、たとえ一人でも足の置き場に困ることだろう。
ふわ、と欠伸が出た。
この近辺では珍しく樹氷が出来たからと、わざわざ見に行ったのだが、結構疲れたようだ。
サクラはこて、とテーブルに頭を落とした。
「・・・あ・・・姫・・・・・。」
「・・・・しーっ・・・・・。」
起こそうとした小狼はファイに制止された。
ファイは壁の衣紋掛けから綿入れを取り、サクラの背に掛ける。
「掘り炬燵だから、身体を横にしない方が楽だよー。」
邪魔にならないように、そっと。
小狼は自分の位置を変えた。
もちろんサクラの方だけを見ながらだったのだが――――――――。


「・・・・・・・・・・・・・・。」


どこかの黒い誰かの眉間に皺の数が増えたのを見ていたのは、白き魔術師ウィザードただ一人。
(まーホントに解りやすいよねぇ・・・・。)
ここの炬燵は長方形をしている。
来客が多いというのもある。
ファイ自身があれやこれやと机上に物を広げまくって何やら作業をしたりするのもある。
一人部屋にしては不自然なほど大きいこの炬燵は、長い1辺には大人二人が余裕で入れる。
小さな子供なら詰めれば5人は入れるだろう。
実際童子達を集めて色々な細工物を作ったりなどすることもあるから、ある意味この大きさは『必要』だ。


そして。
最初はその長い1辺に二人で入ったのだが、サクラが寝たので短い1辺に近い方に寄った――――――――。


小狼自身も何も考えていなかった。
自分が寄ったその場所が。


『その人』にとても近くなるという事を。




―――――――――――――― * ―――――――――――――


『女官長からいただいた』といって持ってきたミカンは、小粒だがとても甘かった。
「甘いですねー!」
嬉しそうに口にミカンを運ぶ少年は、自らの位置に気付かない。
それは『その人』にとても近くて。
そして、少し剣呑な『気』を漂わせ始めた黒い影の真向かいだった。


げし。


「?!」
小狼は思わず口に入れようとしていたミカンを取り落とした。
足を・・・・・。
(・・・蹴られた?)
いや当たっただけかもしれない、と思い直した。
思い直しはしたが。
(・・・・・。)
その顔は、ポーカーフェイスを保ったまま。
さっくりと反撃をした。


げしっ!


(・・・・・・・・・・・!!)
眉間の皺がふっと深くなってスッと元に戻った。
まさに一瞬――――――――小狼も気付かなかった。
(・・・小僧だよな・・・・結構的確に返してくるな・・・・。)
半分は鍛錬のつもりで。
――――――――もう一度。


げしっ!!!


「・・・・・!!!」
小狼は思わず突っ伏した。
蹴った強さはそれほどでもなかったのだろうが、しかし。
当たった所が。
いわゆる『弁慶の泣き所』。
このダメージはかなり大きい。
ついでに言うなら、キレるまでのゲージは一気にMAXに跳ね上がる。


げしっ。
げしっ!
げしげしっ!!


「・・・・ねーねー、おかーさーん。」
「・・・・・ファイ?」
「あ、ゴメン、おねーさま。」
確信犯の笑みと共に。
リアンとちょうど反対側の短い1辺に入り込んだままのファイは、にんまりとした。
「どうするの?」
それは足元の攻防戦を。
「さて・・・いつ止めるかな。」
ポーカーフェイスながら、じわじわと顔が険しくなっている二人を。
「えー?もうちょっと・・・・・・。」
絶対に、『楽しんで』いる。
それは、同じであるようで。
「では、あと5分。」
「よしっ♪」
やたら嬉しそうな白猫1匹。




―――――――――――――― * ―――――――――――――


しかしある意味『大人げない』攻防戦は、実にあっさり幕が下ろされた。
観客を決め込んだファイが、さあいよいよ、と楽しみにする中。
師弟がどうやら本気モードに入り始めた矢先。
決定打は何の悪意も伴わずに、しかし容赦なく振り下ろされた。


ドガッッッ!!!


「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
声にならない声。
しかしそれは2種類あって。


1つは、卓に突っ伏した師弟の呻き。
1つはひっくり返って笑い転げる白き魔術師ウィザードの笑い声。
胸元で小さく拍手をしていた深き紺の髪の人は、そして白き魔術師ウィザードは、ちゃっかり炬燵から出ている。
したがって実害は、ゼロ。
「まあ、自業自得、というところだな。お茶でも淹れようか。」
「あ、手伝うよ〜〜。」
二人の魔術師は水屋に立つ。


『弁慶の泣き所』。
かの剛勇な弁慶ですら、ここをやられると涙を浮かべるほどである、という場所。
そこを容赦なく蹴られたとあっては、如何に鍛えた二人といえどもダメージは計り知れない。
そして『蹴った張本人』が――――――――。


「・・・ひ・・・・・姫・・・・・・・・・。」
「寝相が悪いってのも、これほどか・・・・・・・・・・・。」


淹れてもらった熱いお茶をすすりながら、小狼は、『先』が見えた気がしてならない。
黒鋼は茶より酒、とブンむくれだ。
足の方はファイが診て、折れてないしー、とまた笑い飛ばす。


そしてサクラは。
アドベンチャー体験をしている夢に心躍らせていたのだった。



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またしてもチャットでネタをいただきました。

次のチャットまでには上げなくては、と思いつつ、ポケモンなぞに現を抜かしてまして。^^;
何とか書けました。
ってか、書きながら手が笑う、笑う・・・・・・。
想像すると正視できない。(笑)

これは日本国に帰って最初の冬です。
だから3人とも部屋住み。
炬燵があるのはファイの部屋だけです。
お嬢の部屋には卓袱台はありますが炬燵は無し。
基本的に女性らしからぬ愛想のない部屋です。(苦笑)
反対にファイの部屋には色々な物があります。
そのうち物置部屋が欲しくなるかも。(爆)


           作者・シュウ   2007.01.28UP


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