王の住まいする所と俺たちの居る所とは、一応渡り廊下でつながっている。
戻る道すがら、少しずつ体が軽くなる感じに捉われた。
そしてそれは、渡り廊下を抜けたときに、吹き渡った風を受けたとき、決定的なものになった。
あそこに『澱む』のは。
『異界の空気』だ。
俺はアヤカシを見るチカラは持たないが、気配は感じることがある。
あの部屋の空気は、それに近かった。
人ならぬ者がそこに在る、空気。
『王』は、『人間』なのに。
いや。
『あの気配』が俺の考えている通りのものだとしたら。
王は。
――――――――――『人間』ではない。
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せっかく貰った報奨金なので、一部を酒に換えた。
利き酒をして、中身を確かめて買い求める。
この国は、結構酒の種類が豊富なようだ。
3種類ほど選んで、部屋に持って帰った。
「まあ、今日明日の分ってとこか。」
独り言を耳に留めたのか。
ヘラいのは、へにゃっとした笑みを浮かべた。
「さて、これからどうするかな。」
考え込んでいると、つんつん、と袖を引っ張られた。
「あ?」
振り向くと、ヘラいのがにっこりと笑って紙を突きつけてきた。
そこには。
あくびをする猫。
酒を飲む犬。
「・・・眠けりゃ勝手に寝ろ。」
しっしっと手を払うと、むう、とした顔をした。
しかし眠気には勝てなかったのだろう。
ぺこりと頭を下げ、ぴら、と見せた紙には。
「・・・・・・・・ケンカ売ってんのか、テメェ?!」
俺が蒼氷に手を掛けるのと、ヘラいのが脱兎の如く走って自分の部屋の扉を占めるのはほぼ同時だった。
あとには。
『布団ですやすやと寝て、朝にはキラキラと元気に起きる猫』と。
『酒を飲んで、朝には寝不足でぐったりしている犬』の絵だけが残された。
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数日が経った。
毎日同じ繰り返しなのもいささか飽きる。
朝に起きて。
鍛錬をして。
昼食後、しばらくして軽い午睡を取る。
そして戦支度をし。
月と共に出陣し。
中天にかかった月と共に帰還する。
風呂で汗を流し、食事を取ったり酒を飲んだり遊んだりして、やがて眠りにつく。
自由な時間の過ごし方は人それぞれだが、大体こんな流れだ。
「羽や姫達を捜したりする時間は・・・・昼食後、か。」
午前中の時間は出来るだけ鍛錬に使いたい。
今一番恐れることは、『戦闘能力の低下』だ。
日本国に居たころよりも、かなり落ちているのではないかと思う。
毎日が戦いであった、あの日々。
実戦の状況に身に置くことが、能力の維持につながる。
俺は、強くなりたい。
怪しい存在ではあるが、夜叉王の能力はかなりのものがある。
部下たちも、何人かは相当な腕だ。
相手にとって申し分ない、といった所。
同じことが阿修羅王の陣営にも言える。
なかなかの手練れ、と見えるものを何人か見た。
相見えるためには、そして勝つには。
俺自身が強く在らねばならない。
そして『認められて』いけば。
王の傍に立つことが出来るようになるだろう。
そうすれば、王が『何者』なのか、知ることが出来る。
『羽』に付いての情報も得られるだろう。
案外、『羽』に近いかもしれない。
ふと思う――――――――――小僧の受け売りだが。
「やらなければならない事を、やらないと、な。」
信じ続ければ、いつか必ずきっとネガイは叶う。
(きっと姫達に合流できる。)
次の国へ、きっと行くことが出来る。
だから、今は。
――――――――――自分に『出来る』ことを。
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