オレの存在意義はなんだろう?
ここのところ、よく考える。
オレはこの旅を一緒にしている皆の中で、おそらく最も罪深い存在だ。
何もかも知っていて。
何一つとして語らなくて。
でも、それもオレの大きな目的の為には、小さな小さな事。
(オレには大きな、何よりも大切なネガイがあるんだ。)
でも、時折ちくりと痛むのは――――――――――一体?
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今日は王への謁見を許された。
いや正確には『命じられた』。
オレ達には王に謁見する理由が無いから。
(・・・・・でも。)
ちらり、と見る。
今は黒くなってしまったその瞳。
最初は『剣呑だ』と思った。
続いて、『もしかしたら弄り甲斐が有りそうかも』と思った。
その勘は間違っていなかったと思っている。
黒鋼は、どうやら結構単純で、力は強いが思考はそれほど複雑化していないと知れた。
むしろ複雑なことを考えるという作業を嫌う傾向にある。
これは、むしろ。
(有り難いな。)
いわば強力な護衛を従えているのと同じ。
護衛に知能はいらない。
戦闘面に対しての知能はもちろん必要だが、それ以外のこと、たとえばその側面とか背景事情とか。
そっち方面への『知恵』は要らない。
無用の長物、いや『持っていてはならないもの』。
そんな事を考えるのは、護られる側の人間だけでいい。
そう、君はただその力をもって護ってくれればいいんだよ。
サクラちゃんを。
小狼君を。
そして――――――――――オレを。
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今は十分に理解できるようになった。
誰が何を言っているのか。
まあオレの場合はその心の内まで解ってしまうのがちょっと難ではあるけれど。
基本的に、オレ達はかなりの面で優遇されている。
そのほとんどが黒鋼の技量による実績であることは事実。
だがオレの戦場での働きも、十二分に評価されている。
事実、思ったよりもオレの弓矢の腕は上手で、実は自分でも少し驚いているくらいだ。
オレは弓はほとんど遣ったことは無かった。
もちろん知識としては知っているし、理論面では申し分ないと思っている。
でも、所詮は実際にやったことの有る無しが大きく左右する問題だ。
本当は。
少し、怖かった。
レイピアならまだしも、大剣を振り回すことは体力的にも問題がある。
戦場では結局1対多数。敵が途切れることは無い。
他の武器を考えたがいずれも自分には荷が勝ちすぎた。
それに、『殺さない』ということも踏まえていなくてはならない。
命を奪うことは、何よりも重い。
絶対の真理。
そして何よりも、『この世界にずっと居る』為には、戦争に終わってもらっては本当は困る。
終わってしまえば『傭兵』の身分であるオレ達は行き場を失ってしまうからだ。
オレ達は、待っている。
サクラちゃんと小狼君が、この世界に来るのを。
オレの見た未来では、2人は戦場に現れる事になっている。
つまり、その時点で戦争は継続されていなければならない。
オレ達はここで雇われて生きる術を与えられたように見せかけて、実は戦いを長引かせている。
いわばオレ達は、『戦争そのものを終わらせない仕掛け人』だ。
手段は簡単。
『殺さなければ』いい。
戦争なんてものは、所詮は消耗戦。どちらかに戦う力が無くなれば終わる。
戦争を継続させたければ、戦う力を途切れさせなければいい。
味方を守り、犠牲者を出させないようにする。
敵は殺さない程度に負傷させ、傷が癒えればまた戻ってくるように仕向ける。
最初は、やはり訝しがられ、疑われた。
「何故殺さない?」
当たり前の質問だ。
そしてこの問いは、兵からも隊長からも、そして――――――――――。
「答えてくれぬかな?」
今目の前に泰然自若の態で座す美しくも不思議な王からも発せられた。
「お前たちほどの力量あらば、戦いの終結はいと容易い事であろう。」
「過大評価だと思うがな。」
「そうか?では何故殺さぬ?わざわざ傷つけて、苦しむのを見るのが好みということか?」
「違うな。」
「では?」
「殺しちまったら、『お楽しみ』が減るじゃねぇか。」
口元を歪めて笑って見せた黒鋼。
(半分は・・・・本音だろうな。)
では、残り半分は?
夜叉王は、その気配をふ、と暗くした。
「楽しいか、『戦い』が。」
「あぁ。『楽しい』な。」
そう言い切って見せて。
これでこの件は終わりだ、と言外に宣言する。
(・・・おや。)
意外な気がした。
(もしかして・・・結構『切れる』のか?)
ただ面倒だとか、そういう問題ではないような気がする。
意外にその内部は、『賢しい』のかもしれない。
オレは。
その時に。
その事をもっと深く心に刻むべきだったんだ。
後悔先に立たず、という言葉を身をもって知ることになるなんて。
その時のオレは知る由も無かったなんて。
オレは。
――――――――――魔術師失格だ。
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