暇だな
黒たんがぼそっと呟いた。
「暇だ。」
もう一度繰り返したところをみると、本当に暇をもてあましているらしい。
今日は年に一度の『忌み日』だとかで、出兵はされないと聞いた。
聞けば修羅ノ国にも同様の習慣があるとかで、この日だけは暗黙の了解的に双方がその矛先を収める。
兵士たちにとっては正月か何かのような、貴重な休暇だろう。
家族と過ごす者も居る。
ここぞとばかりに飲み明かす者も居る。
だけどオレ達はこういう時、本当に暇になってしまう。
『客』でしかない自分を実感させられるというか、なんというか。
暇なら大好きな鍛錬でもすれば、と進言しようかと思ったが、相手に立てと言われそうでやめた。
今日くらい、オレだってのんびりしたい。
風は、それを許してはくれなかったのだけれど。
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『羽』の気配はずっと感じている。
オレは紙に絵を描いた。
羽の絵と、そこから変な電波のようなのが出ていて。
それを浴びた黒猫が顔をしかめている絵。
一瞥して、黒たんは眉間の皺を深くした。
「『羽』が悪い方向に働いているのか?」
オレは首を傾げてみせる。さすがにオレにもわからない。
『あれ』は、『良い』方向なのか?それとも『悪い』方向なのか?
視点を変えるだけでモノの善悪というものは簡単に逆転する。
夜魔ノ国の人々から見れば―――――――『良い』方向、かも知れない。
修羅ノ国の人から見れば、間違いなく『悪い』方向だ。
では、オレたちから見れば?
オレは、『良い』方向だと考えている。
というよりは、全てが必然。
オレ達がこの国に来たのも、この国に『羽』があるのも。
そして、『羽』がああいった形で存在している事も。
それは全て、いずれやってくるサクラちゃんと小狼君に帰結する。
『羽』は確実にサクラちゃんに取り込まれるのだろうけど、問題はその過程。
どうやって小狼君を『羽』に近づけるか?
こちら側に引き込むのは得策ではない。
小狼君は阿修羅王の客として参戦してくるはずだ。
つまり、『敵』。
オレ達は小狼君と戦わなくてはならない。
知らないふりして。
魂を同じくする別人のふりをして。
真剣に、命ぎりぎりの戦いをしなくては。
(難しいぞ。)
オレは芝居を完璧にこなす自信がある。今までもそうだった。
でも、黒りんに、それが出来るだろうか?
『遅かったな、小僧!』なんて戦場で声をかけたりしないだろうか?
肝心なのは、小狼君たちが敵陣営にいる、という事。
味方であっては、『羽』は手に入らない。
いや手に入るかもしれないけれど、それには大きな困難を伴うだろう。
自然な形で、誰もが納得の行く形で、『羽』を手に入れないと。
オレ達は、未来から来た。
過去への干渉は、極力避けなければならない。
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