〜銀漢の章〜
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それにしても、声が出せないというのは本当にもどかしい。
(オレ、『話す』って事、忘れちゃうんじゃないかな?)
実際『話さない』事によって『話す事ができなくなる』という実例を見なかったわけではない。
ただ、それは1人暮しになってしまった老人とかに見られる現象ではあるのだけれど。

目の前に『語る相手』が居るのに。
『話せない』もどかしさ。

ふと思った。
(オレ、ずいぶん変わった発想するようになった?)
今までの自分からはちょっと想像がつかない。
自分でそう思うんだから、他人から見ればなおさらだろう。
それは『この国』がそうさせるのか。
目の前に居る彼―――――――黒鋼がそうさせるのか。
小狼やサクラ、モコナの影響だろうか。
少し考えてみた。
(小狼君達は。)
オレ自身にとって、どういう存在だろうか。
まずサクラちゃんは『守らなければならない存在』だろう。
戦う力を持たず、不安定な眠りと覚醒の境い目に危うく立っている。
天性の資質に助けられているとはいえ、彼女自身の『本来の目覚め』にはまだ程遠い。
(『その時』が来るまでは。)
何としても―――――――守ってやりたい、と思う。
知らずに負うた宿命の瞬間までは、何としても、いや、出来るだけ。
(・・・小狼君は。)
彼もまた、『守られねばならぬ』存在。
彼にそんな意識は無いだろうし、むしろ不本意とするかもしれない。
だが、恐らくは、そう、オレだけが知る真実は、あまりにも過酷で。
彼自身の優しさ、一途さが、いやそれ故に彼自身が押しつぶされるのが目に見えるようだ。
彼自身の『崩壊』はあまりにも悲しい結末しか見えない。出来る事なら避けて通らせてやりたい。
その発想自体がすでに以前の自分らしからぬものであると、どうしてその時気づかなかったのだろう?

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目の前にいる黒き影を見る。
窓外を眺めながら酒を口にしている彼は。
(オレにとって、黒鋼は・・・・もしかしたら。)

手駒にするつもりだったが先んじられた。邪魔をするようなら殺せ―――――――。

その声を聞いたのはいったい何時の事だっただろうか。
遠い遠い昔のようで、でも昨日の事のようで。
何時か自分にその剣先を付きつけるかもしれない。
事実鞘ではあったが、あごを掬われた。
『そういう奴が一番嫌いだ』と切り捨てられた。
だが、彼自身は気づいていないかもしれない。
ぶっきらぼうで、面倒くさがりで。
だが人一倍弱き者に心を向けている。
サクラちゃんしかり、小狼君しかり、モコナしかり。
時には自分さえも一くくりに『面倒見られて』いたりする。
(不本意だ。)
誰よりも自分が先んじているという自負がある。
それなのに、自分が『守られる』なんて。
(このオレを『守ろう』とするなんて。)
図々しすぎやしませんか、と。
小一時間問い詰めたいところなのだ。

ぞく、とした。

視線を感じて顔を上げると、今は漆黒の闇と化した瞳がまっすぐに射抜いていた。
へら、と笑って見せて己を鎧う。
(近寄らせはしない。)
自分の傍へ、内面へ。
彼は『敵』に最も近い存在なのだ。何を好き好んで懐に入れねばならないのか。
一定の距離を保って、しかし悟らせぬように自分が優位にあらねばならない。
(ふん。)
簡単なことだ。今までもそうだった。
自分は誰に心を許しはしなかった。
セレスの人々は優しかったが、『自分』を預けるほどではなかった。
アシュラ王は確かに自分を連れ出してはくれたが、それも思惑あってのこと。
いわば下心付きの行動、故に全てを委ねるには値しない存在。
王には傾倒し、感謝しながらも、何処か醒めている自分が確かに居る。
(オレって嫌な性格かもね。)
自嘲する。全てに対して己への憐れみを込めて口元を歪ませる。


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ファイは知らない。気づかない。
旅の最初から見てきたかつての紅玉に、それこそが藍玉の変化であるのだと。
すでに看過され、注視されていようなどと。
全ては神ならぬ身が故の。
月の光だけが知る、それは、真実。




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半年に1回更新の「夜魔戦記」です(笑)。
前回は11月の更新でした・・・・。
まあ予定では6月末日までに完成させる、という事で。ピッチ上げられたら良いな、と。
という事で、夜魔の神様、強制降臨です。(爆)

         作者・シュウ    2009.05.05UP

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