〜幻日の章〜
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「面白ぇ。」
王は俺達にケンカを売るつもりなのか。いや、そのような思惑はあるまい。
面白がっているのか。いや、それも違うだろう。
では何故このような事を言い出すのだろうか?
それ以上語らずに黙っているとやがて王はおもむろに語り始めた。
「そなたたち、『何』を知っておる?」
「何、をだ?」
質問で返せば、王は肩を少しすくめた。
「問いに問いで返すのは良くないな。」
「そりゃあ悪かった。俺は頭が悪いんでな。あいまいな事を言われるとどうにもいけねぇ。」
王の目は、信じていない、という色を見せていた。もちろん俺もごまかせたとは思っていない。
「では質問を変えよう。そなた達は『私』をどう思う?」
施政者が自分の評判を部下に尋ねる例がないわけではない。
しかしどのような答を求めているのか。
美辞麗句を連ねたお世辞や歯の浮くようなおべんちゃらなど期待してはいないだろう。
もっとも頼まれても俺にはそんな事を言う頭も口も持ち合わせてはいないが。
「どのような事についてだ?内容によって答は変わる。」
容姿を聞かれて頭の中身を答える事もないし、剣の腕を聞かれて読み書きそろばんの事は答えない。
王の目―――――――黒曜石のような、闇の色をしたその目は、すう、と細められて、やがて閉じた。

「私の―――――――存在について。その『意義』と『意味』を問いたい。」

「『意義』と『意味』か。」
『意義』とは簡単に言えば『その言葉が示す内容』であり、転じて『価値』を意味する。
『意味』もほとんど同義だが、こっちには『理由』という事も含んでいる。
問いたいのは己の存在する理由と価値であろうと推測した。
「・・・・・所詮は他所よそ者の戯言と聞き流してくれて構わんが。」
「構わぬ。遠慮なく言うがいい。」
「お前は『必要悪』だ。」
背後で魔術師ウィザードが気配を変えた。俺が言うとは思っていなかったのだろうか。
「それは『悪しきモノ』ではあるが『必要である』という解釈で良いのか?」
「あぁ。」
そのように言われてもなお泰然としているという事は、予測の範囲内だったという事か。
「面白いな。今までそのように評した者は居なかった。やはり『外』から来た者には『よく見える』という事かな?」
俺は肩を竦めた。
「あまり関係ないとは思うがな。まぁ利害関係的に希薄だからこそ言える事なのかもしれねぇ。」
「なるほどな。」
王の顔に面白そうな色が浮かんだ。
それは、望んだ答が引き出せるという喜びに満ちているような。
「具体的にはどうだ?忌憚なく聞かせてくれ。」
「具体的に、か。」
俺の思うとおりに言えば、普通の者なら怒り出すだろう。
多分天照だったら『手打ちじゃ!』とか言い出すくらいの。
だがこの王はそれはないと考える。
王は、解っている。
真実を。
そしてそれを言葉にされてなお許容する度量もあると見た。
つまり遠慮は要らない、という事だ。

「お前は―――――――本当なら『存在してはならない』、『既に存在を認められていない』モノ、だ。」


―――――――――――――― * ―――――――――――――


奇妙な噂を聞いた。

王は長く病魔に侵されていた。
ある日、人払いを命じ、数日間部屋にこもって祈りを捧げていた。
満願の日、侍従達の前に現れた王は、すっかり健康体になっていた―――――――。

祈りが通じ、神が奇跡を起こされたのだ、と。
顕現あらたかな王の元、戦いも有利に進むだろう。
月の城を手に入れるのは我々夜魔の国だ。
兵も民衆も侍従も、医者までが信じて疑わない。
(そんな上手い話があるかよ。)
祈りだけで人が健康になり救われるというなら、母は何故救われなかったのだ。
あれほどのチカラを持っていた母ならば、ほんの少し祈るだけで。
だが実際は咳き込み、血を吐き、苦しみながらただただ祈り。
挙句のはては異世界らしき所から現れた剣に貫かれて死んだ。
神が、仏が、助けてなんぞくれるものか。
己を助けるのはただ己のみ。
あの日あの時修羅と化した自分がただ悟った、それは真理だ。
その思いは今も変わらない。
では王が回復した理由は?
(回復・・・・したんじゃねぇ。)
『それ』を言っても良いものかどうか、ほんの少しだけ、迷った。

「あんたは・・・・・『もう死んだ』んだろう?」

部屋の窓は閉め切られているのに、王の髪がさわりと靡いた。




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黒様一気に核心に迫ります?!
真実は何時も1つ!(爆)
いやいやファイさんは知っている分も含めて聡いとは思いますが、黒様だって、なかなか。
しかし、『お前はもう死んでいる』なんてどこかの拳法家のような(爆)。
夜魔戦記、いよいよ佳境です。(今ごろかい!!)

         作者・シュウ    2009.05.09UP

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