〜幻日の章〜
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普通、『お前はもう死んでいる』と言われて平静でいられる者は居ないだろう。
だが王は変わらず泰然自若としていた。
その点においては、肝が据わっていると誉めてやってもいい。
いや、むしろ。
(諦めの境地ってヤツか?)
そうでも考えなければ、目の前の王の態度はどうにも理解できない。
僅かな微笑をその口元に浮かべ、ゆったりと背もたれに体重を預けて。
睨むでも凝視するでもなく、緩やかな視線を投げかけている。
たとえこれが『人ならぬ気配』を漂わせていなくても、ここだけ別世界だと言っても過言ではない。
(まあ元々俺達にとっちゃここは異世界だがな。)
だからと言って生者と死者を分かつ世界である事は本来同じなはず。
それを歪めるものは―――――――。
「この際だから単刀直入に聞こうか。・・・・・不思議な『羽』を持っているな?」
王は笑った。今まで見たどの笑みよりも柔らかで。
そしてぞくりとするほど凄絶な。

「『持っている』・・・のではない。『私』が『羽』だ。」

予想の範囲内だ、と呟けば。
満足そうな笑みが返る。
「何時、何処でわかった?」
「最初から、と言ったら怒るか?」
「・・・・いや。」
「正確には『最初』じゃねぇな。『最初』は疑問に思っただけだ。」
「ほう。」
王の目に、初めてと言ってもいい色が浮かんだ。
子供のような、純粋で素朴な、『興味』という名の。
「推測するに、お前達の目的は『羽』か?」
「そうだ。」
もう隠す必要はないだろう。俺はざっとかいつまんで説明した。
「・・・というわけで、俺達は姫の『羽』を探しながら旅をしている。ここに来たのもまあ、偶然だ。」
「偶然、か。」
ふむ、と夜叉王は考え込んだ。
「『偶然』ではなかろう。やはりここは『必然』であると考えるべきであろうな。」
「あの魔女の言いぐさを真似るのは業腹だが、とりあえず異議は無ぇ。」
嫌そうな顔だな、と王は笑った。こればかりはどうしようもない事だから聞き流す。
「で。」
王は初めてそこで表情を改めた。

「そのサクラ姫とやらがこの世界に来たならば・・・・お前はこの『羽』を『奪う』のか?」


―――――――――――――― * ―――――――――――――


手段と理由と。
どれほど取り繕ったとて、その行為そのものに変わりはない。
「・・・・そうだな。結果的には『姫に返してもらう』・・・・つまりお前から『奪う』ことになるだろうな。」
「嫌だと言ったら?」
「まあ普通は言うわな。」
何処の誰がこれを失ったら自分が消えてしまう大事な物をハイそれでは、と差し出すと言うのか。
そんな事をするのはよほどのお人よしか―――――――偽善者だけだ。
そういうと、王は我が意を得たりと声を上げて笑った。
「まったくもってお前と言う存在、面白いの一言に尽きる。お前が元々この国に居らなんだのが真に口惜しい。」
「・・・とりあえず誉め言葉と受け取っておくが。」
半分は誉められてない気がするがまあどうでも良い。
王は静かに天を振り仰いだ。
「私は・・・・もう存分に生きた、と思っている。しかし私が死ぬとこの国は立ち行かぬ。」
「後継者は居ねぇのか。」
「居らぬ。」
王に后も側室も居ない。当然だが子供も居ない。となれば必然的にお家騒動が勃発するだろう。
そこを阿修羅王につけこまれたなら――――――――。
「阿修羅王は・・・・・・そのような事をしない。」
「ずいぶんと虫のいい解釈だな。」
戦場で見かけたことのある阿修羅王の姿を思い浮かべた。
美しい、女――――――――だと最初は思ったが、すぐに違和感を感じた。
見た目は女だが、違うかもしれない。かといって男だとも思えない。
(両性具有、という感じでもなさそうだな。)
ごく稀に、そういう半陰陽ともいうべき存在が日本国にも居ないわけではない。
だがそのどれも該当しないように思った。
(ま、男だろうが女だろうがどうでもいいが。)
当面の問題は、阿修羅王よりも夜叉王の方にある。
「跡取りを、こう、指名とかはしねぇのか?」
「すればその者が危険な目に遭うであろう。・・・・かつての私のように。」
どうやら知世姫や天照のように、暗殺の危機にいつもさらされていたようだ。
同じ目に遭わせたくない、というのは理解できるが、しかし。

「だからこそ、私は月の城を手に入れなければならないのだ。この国に平和をもたらすために。」

ネガイとは。
主客転倒をいとも簡単にさせるものだと相場が決まっている。




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実家でのお留守番のおかげで書き進める事ができました。(苦笑)
夜魔の神様は実家に御逗留であったらしい(爆)。
こっちにもそのまま来て下さいますように・・・・・・。
あ!もちろん休憩は挟んでいただいて問題ありませんから!
6月末までに書きあがればOKですんで!(こそこそと下手したてに出るww)
どちらにしてもこれで完全にストックがなくなったので(笑)がんばりますー。

         作者・シュウ    2009.05.12UP

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