戦いを終結させ、夜叉の国を安泰なものにする為に月の城を手に入れる。
その為に修羅の国と戦い続ける。
「矛盾しているって事に気がつかねぇのか?」
「そのあたりがお前の言うところの『必要悪』かな。」
かすかな笑みに、自嘲の色が見える。
「戦いを終わらせるために戦う――――――――そう、馬鹿げている事だ。それは、よく解っている。」
「では、何故戦う?」
夜叉王はまっすぐに俺を見た。漆黒の瞳に、幽かな光が映る。
「やがて迎えるであろう終末の時。そこへ向かう為にエネルギーを放散し続けている。」
「えねるぎー?」
「そのものが持つ、生命力・・・あるいは生きるための力とでもいうものかな。」
もう私にはそれは無いが、と口元を歪ませて呟く。
生きるための力。
それの持つ輝き、煌き。王にとって、もはや手の届かぬものとなってしまったであろうその『光』。
「お前の持つ『光』は、誰よりも輝いている。」
王は立ち上がり、ゆっくりと窓辺に歩み寄った。そのまま窓外に目を遣る。
視線の先には、一体何が映っているのだろうか。
「半年。私に与えられた、『考える猶予』であったと思っている。」
真実の足音を、垣間耳にして。
それを見極めようと願う、それは、『勇気』。
「お前たちが来てからの半年、私は考え続けた。この事態、どうするのかと。」
「結論は出たのか。」
「・・・いや、まだ確たる答を導き出せてはいない。」
自らを『消す』か、偽りの姿のままでの存続を願うか。
「『綻び』は必ず発生する。私はそれによって国が乱れるのを望んではいない。」
「・・・かといって、今ここで消えるわけにもいかねぇ、か。」
「そうだ。」
王がとるべき道は、―――――――――― 一体?
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「やがて来るであろうサクラ姫とやらには、『人を変える力』があるといったな。」
そう、姫には不思議なチカラが有る。
「サクラ姫は夜叉の国には来ぬのであろう?」
その質問は魔術師に向けられていた。背後で金髪が揺れ、頷いているのがわかる。
「これもまた『必然』か。」
くっと笑った。
「人を変える力を得られぬ私には半年という時間、人を変える力を得る阿修羅王には短い時間・・・・・。」
半分真顔で、半分哀しげな笑顔で。
王は、問うた。
「どちらが幸せなのだろうな?」
天を仰ぐ王の気配が揺らめく。その存在そのものが揺れている。
「俺個人の意見だが・・・・・『どちらも恵まれている』だろうな。」
ちょっと驚いたような顔をして王が俺を見た。
「どちらも、か?」
「どちらも、だ。」
「根拠があるのか?」
きり、と。
左手が痛んだ。
「俺には人を変える力を得ることも、そして『時間』も無かった。」
諏倭のことを語る必要は無いだろう。
そして今語りたいとも思わない。
あれは、俺の心の楔。
俺の中に封じ、くすぶり続ける置き火。
急転直下の嵐に翻弄された自分にとって、今の夜叉王はそして阿修羅王は、恵まれすぎている。
「いずれの道にも、感謝するんだな。」
「・・・・・そうか。」
顔を上げた王の目は、どこか曇りが吹き払われたように見える。
事実、表情も生き生きとしているような?
「お前の言葉、真に至言。まさに金言だ。・・・・・おかげで決心がついた。」
「決心か。どうするんだ?」
道は二つ、選ぶべきは一つ。
「このまま『生き続ける』か、『消え去る』か。」
そのどちらを選ぶ?
王は、静かに笑った。
それは、諦めと呼ばれる感情だけではない、他の何かをも含んでいて。
「『消え去る』道を。―――――――私の『存在』を願った、阿修羅王と共に。」
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